1. 数字で見る「足りない」の実像
よく引用されるのが、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)です。2030年に最大約79万人のIT人材が不足する、という推計。
ただ、この79万人は「高位シナリオ」の数字で、実際には中位で約45万人、低位で約16万人と、3つのシナリオが示されています。79万人という数字だけが独り歩きしている面は否めません。
むしろ足元の数字のほうが生々しい。
- IT人材の転職求人倍率:10.4倍(2025年12月時点)
- 全業種平均:1.18倍
- セキュリティ領域:42.6倍
つまり「足りない」は将来予測ではなく、すでに現在進行形の状態です。
2. AI時代に足りないのは「人数」ではなく「役割」
先ほどの経産省調査には、あまり引用されない数字がもうひとつあります。
2030年時点で、
- 先端IT人材(AI・IoTなど)は約55万人不足
- AI人材だけで約12.4万人不足
一方で、従来型IT人材は約10万人が余剰になる
不足と余剰が、同時に起きるという推計です。AIが人手不足を埋めてくれる、という話ではありません。求められる役割そのものが移動している、という話です。
市場もそれを裏付けています。生成AI関連の求人は2021年1月にわずか55件だったものが、2025年5月には約1万件。およそ180倍に膨らんでいます。
では、AI時代に必要とされるエンジニアとは何か。私たちの実感では、こういう人です。
- 業務課題を要件に翻訳できる(上流を握れる)
- AIを前提にアーキテクチャを設計できる
- AIが出したコードの妥当性を判断できる
- セキュリティやインフラまで含めて全体を見られる
- 「言われた仕様を実装する人」から、「何を作るべきかを決められる人」へ。
そしてこれは、1人のスーパーエンジニアの話ではなく、チームとしての総合力の話です。ここが重要でした。
3. 日本の構造問題——知識と経験が「分散」している
日本のIT産業は、多重下請け構造とフリーランス化によって、知見が広く薄く分散しています。
「求められている知識や経験を持った人」は、実は存在します。ただ、その人はA社の部長で、隣接領域の専門家はB社の役員で、デザインの目利きはフリーランス——というふうに、各社・各部署のトップに1人ずついるという状態になっている。
一社の中に全部が揃っている、という状況はほとんどありません。中小・中堅であればなおさらです。
結果、大手企業から良い引き合いが来ても、1社では受けきれない。手が届かない。
これは能力の問題ではなく、配置の問題です。
4. だから、連合を組んだ。「ワンテックワールド」とは
ワンテックワールドは、2024年5月に結成した、D-POPS GROUPのIT企業3社による開発アライアンスです。
- 株式会社テックビーンズ
AIソリューション・システム開発
- 株式会社アットマーク・ソリューション
システム開発・インフラ・モバイルアプリ・コンサルティング・プロダクト
- 株式会社アイデアランプ
Webサービス開発・デザイン・クリエイティブ
仕組み自体はシンプルです。
① 窓口を増やす 3社のどこに相談が来ても、3社の総力で受けられる。お客様から見れば「入口はどこでもいい」。分散していた窓口を、実質ひとつの受け皿に束ねるという発想です。
② 強みを重ねる AI・基幹/インフラ・デザインという、重複の少ない3領域。上流の要件定義から実装、UIまでを一気通貫で担保できます。1社では届かなかった規模の案件に、正面から向き合えるようになりました。
③ ナレッジを共有する テックビーンズを中心に、3社合同のAI勉強会を継続的に実施しています。「連携できる会社」ではなく「同じ水準で話せる会社」にしておく。これがないと、連合は看板だけになります。
一夜にしてできた話ではない
背景には積み重ねがあります。DPOPS GROUPに、テックビーンズとアットマーク・ソリューションが参画。ここからグループ会社間の協業実績が蓄積されていきました。その後、デザイン・クリエイティブに強いアイデアランプがグループにジョインし、開発からデザインまでをカバーできる布陣が整った。
そこで初めて、アットマーク・ソリューションから声をかけ、2024年5月に正式結成に至っています。
発足から約1年半で、グループ内の連携案件は20件程度まで積み上がりました。
5. これから——加盟企業を増やしていきます
3社はあくまでスタートラインです。今後、アライアンスの加盟企業を増やしていく計画です。
求めているのは「下請け」ではありません。明確な強みを持ち、対等に組める会社です。
連合に加わる会社が増えれば、お客様が相談できる窓口も、受けられる案件の規模も増えていきます。分散している知見を、集約するのではなく「接続する」。それが私たちのやり方です。
ご興味のある企業様がいらっしゃれば、ぜひお声がけください。
6. そして、ナレッジを発信していきます
もうひとつ、このアライアンスで掲げていることがあります。
複数社での開発体制の作り方、AI活用の現場での試行錯誤、見積りや契約の実務——アライアンスを回す中で得た知見を、外に出していくこと。
日本のITの課題が「分散」にあるなら、解決の一部は「共有」にあるはずです。
私たちの試行錯誤が、同じ課題を抱えるどこかの誰かの参考になれば、それ以上のことはありません。これから、この投稿で少しずつ発信していきます。
出典
経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)
レバテック「IT人材の正社員転職市場動向」(2026年2月/2025年12月時点データ)
生成AI関連求人推移:転職市場動向調査(2025年5月時点)
